ろまんくらぶ「仮面の天使」175

土曜日の朝になる。
それぞれの時間が始まる。

「ね、朝ごはんどうする?」
「いつものバーガーでモーニング?」
言われて茉莉は少し考える。
「今日は帰ろっかな」
「めずらし」
「うん、ほら、保護者の予定聞いとこうかなって」
「ああ、来週のタコパの?」
「まあね」
「りょーかい。確か朝なら確実に会えるって言ってたっけ」
「うん。朝食時間に帰れば」
「オッケー」
茉莉は2人と別れて電車に乗る。この時間は朝帰り組で車内は埋まっていた。

マンションに着いて玄関を開けると、健の靴がやはりある。酔って帰ったのか靴は揃えられていない。微かな音がキッチンから漏れてくる。それと同時にトーストの焼ける香りがする。
「ただいま」
この時間の茉莉の朝帰りはめずらしいし、ましてや声をかけてくるなんて、、。彼はちょっと嬉しくなって話しかける。
「何か食べる?」
「うん」
彼女は素直に答える。
「トーストとベーコンエッグにサラダ、あとカフェオレでいいかな?」
「うん」
彼女の前にこんがり焼きたて のトーストが差し出される。
「美味しそう、、」
とお腹が正直に反応する。ほどよくバターが塗ってあるのがよけいに食欲を刺激する。ひとくち頬張るとなんだか穏やかな気持ちになる。
コーヒーカップを持ちながら健は椅子に腰掛ける。彼は「めずらしいね」という言葉を飲み込む。茉莉との平和な朝なんて何日ぶりだろうか、、。
彼女が口を開く。
「あのさ、来週の金曜日ってどんな予定?」
智子や京子と健との接触を極力減らそうと茉莉は探りをいれる。
「うーん、今のとこ予定はないかな、、。帰りは7時か8時くらいだと思う」
「あー、やっぱり」と茉莉は思うが顔に出さないようにする。
「何かあるの?」
「ん、友達来るかも」
一応伝えておく。
「いいんじゃない、たまには」
茉莉は彼女達と彼が親しくなるのは避けたかったけど、先に話しておいて対策を練ろうと思う。
「ありがと。じゃあ、オッケーってことだね」
にっこりと笑う彼女の心には裏があった。そんな表情の微妙な感じに健は気づかなかった。


そんなふたりの状態とは無縁の教授は、いつものように行きつけの喫茶店でモーニングを食べていた。ひとりの朝はもう嫌だなあと感じていた。茉莉との関係をもっと進めたいと思い始めていた。ただ、年齢差だけが引っかかっていた。長い研究生活のために時間の全てを費やし、気がつくと婚期を逃していた。婚期どころか恋愛も、、。彼はふかーいため息をつくと、珈琲に口をつける。

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