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zoom RSS ろまんくらぶ「仮面の天使」171

<<   作成日時 : 2019/05/02 11:03   >>

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結局、健は夜風の誘いを断れず、会社の帰りにフラフラとひとりで行きつけのレストランに入る。小さな店だけど、変わった料理を出すイタリアンで、いつも常連で賑わっていた。
「何名様ですか?」
「今日はひとり」
「カウンターはいかがでしょうか」
「それでお願いします」
健は係に案内されて、カウンターの端に座る。彼よりも奥には仲が良さそうなカップルが座っている。仕草を見ていれば、ふたりがどんな関係なのかはすぐにわかる。なかなかの美人がその細い指先で彼氏の唇の下に少しついたソースを優しく拭って、ひょいと赤い舌で舐める。

そんなカップルの様子を見ていると健はジェラシーが湧いてくる。「ちっくしょう」と心の中で呟く。
「シャンパン。グラスで」
少しやけになると「ええい、今夜は飲んでしまえ」とばかりにシャンパンを一気に飲み干す。注文したアペタイザーが運ばれてきて、次々と口に運んではグラスを煽る。ついでに赤ワインのボトルも頼み、まずいなあと思いながらもグイグイといってしまう。
「あと、この牛頬肉の煮込みと、玉ねぎのオーブン焼き、それとリゾットと」
なんだかこれではやけ食いのようになってしまう。ワインを次々と注いでは開けて、だいぶ酔いが回ってきた所に、店員が女性のひとり客を健の横に座らせる。常連らしく彼女は係と楽しげに話している。
「いつものお願い。あと、そうね、、、ホタテのカルパッチョ」
「かしこまりました」
薄暗い店内で見るとその女性は艶めいて見える。健はなんとなく鼓動が早まってくるように感じる。




いつまでもバスルームでぼんやりしている訳にもいかず、アンディはガウンを羽織るとドレッシングルームへ入る。ドライヤーで髪を乾かし、鏡を見つめる。ブラシで髪を整えると、顔の左右を確かめるように眺める。ふっとため息をつくと、ドライヤーをしまい、出してあった、パジャマに着替える。チェストの中からナイトガウンを取り出すと、自室へは戻らずに、また庭へと出る。

梅の樹を見上げると花々が見事に輝き、芳香があたり一面に漂っていた。ひとひらの花びらがくるくると落ちてきて、アンディはそれを手のひらで受け止める。ふわりと触れる感じが、茉莉の柔らかそうな髪を思い出させる。彼は花びらを手の中に包み込むとポツリと呟く。
「決めた。とにかく彼女と友達になろう」
アンディは茉莉との距離を縮めることを決心した。

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