ろまんくらぶ「仮面の天使」150

朝日が茉莉の顔を照らし、彼女は眩しそうに目を細める。
「いい天気、ね」
「うん」
二日酔いで頭痛がしているはずでも教授の機嫌は悪くはなかった。手を上げると彼はタクシーを止める。
「乗って乗って」
押し込むように茉莉を奥に乗せる。
「送ってくから」
「え、いいよ。電車で帰れるし」
「いいのいいの。送ってから僕んちまで回ってもらうから」
「わかった。ありがと」
「えーっと、君の家って」
「そばまででいいよ。駅まで」
「了解」
茉莉は家の側の駅名を運転手に告げる。そうだった。教授の借りたマンションにもう彼女は住んでいないのだった。教授はそれとなく茉莉にわからないように彼女の家の側の駅の名前をメモる。それだけでなんだかホッとする。

横を見ると彼女はこっくりこっくりしている。やわらくウェーブした髪が陽の光の下でキラキラ光っている。
「やっぱりかわいいなあ」
頭がはっきりしてくると教授は自分の言った事を半分思い出す。そうだ、彼女の弟たちと交わした約束を破るような事を言ったはずだ。一瞬、彼は難しい顔をするが、「ま、いっか」と気楽に考えようと思い直す。別に今すぐ好きな彼女と離れる必要はないのだと気を取り直す。
「いいよね。ちょっとくらい」
まるで自分に言い聞かせるように教授は呟く。

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