楠えりかのフレンチ・ヴォイス・ブログ

アクセスカウンタ

zoom RSS ろまんくらぶ「仮面の天使」88

<<   作成日時 : 2017/03/15 18:28   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

コチコチ、コチコチ、と規則正しく聞こえる音がだんだんと健の耳についてくる。
「どうしたのかなあ」
時計は9時を過ぎている。大きなため息をつくと、健は再び調理に取りかかる。冷蔵庫からバットを出し、ラップをはずす。油を火にかけると温まるまでダイニングの椅子に腰掛ける。茉莉に何かあったのではないかと心配で、そっちに気をとられてしまう。油が温まり、衣を落とすと、ぱちぱちと音をたてて浮き上がってくる。仕方ない、揚げておこうか。茉莉には揚げたてを食べてもらいたかったものの、彼女が帰ってきてから揚げていたのでは、夕飯が遅くなってしまう。もう十分に遅いのに。

トンカツをすべらせるように油へ入れると、ジャッと音がして、細かい泡に肉が包まれる。揚げている音が台所に響き、そのうちに香ばしい匂いがしてくる。パチパチ、パチパチ音がしてきて、衣がきつね色にこんがりとしてくる。少し軽くなったところでカツを油から引き上げる。
「よし。なんかうまくいったかも」
健の気分は持ち直す。あとは茉莉の「ただいま」が聞きたかった。

「ただいま。今日は疲れちゃった」とか「わあ、おいしそう」とか「いい匂い。お腹ぺこぺこ」とか、、。何気ない一言一言が今の健にとっては宝物のように光り輝く。
「さてっと」
トンカツをお皿にのせ、キャベツを盛ると、彼は念入りにラップをかける。お味噌汁もだしに具材を入れて、一煮立ちさせておく。カチッと火を止めると、台所は再び静寂に包まれる。

コチコチ、コチコチ、、、10時になってしまう。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文
ろまんくらぶ「仮面の天使」88 楠えりかのフレンチ・ヴォイス・ブログ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる