テーマ:恋愛小説

ろまんくらぶ「仮面の天使」143

あれっと思うと頬をつたうものがある。泣き虫だった過去の自分が蘇ってくる。わあわあ泣きたいと、抑え込んでいた気持ちが、酔った勢いで茉莉の胸元まで上がってくる。と、その時、気がつくと教授の目が真っ赤になっている。彼も泣き出しそうだった。 「やっぱり何かあったんだ」 彼女はそう感じると、涙をぐっとこらえる。二人ともレストランで泣き出したら…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」142

怠そうな教授を見ていると何だか茉莉も怠さを感じてくる。 「だる」 小さな声でそう呟いたので、レストランで低く流れている音楽に紛れて、教授には聞こえない。今夜は穏やかな時間が過ごせると思っていた彼女は、どうもおかしな様子の彼にちょっとがっかりする。酔っ払っているので彼は彼女が横を向いて頬杖をついても気にしない。 「恋愛って難解」…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」141

普通でいることが、どんなに難しいことなのか、普通の平穏な生活を送っている人々には理解できないだろうと茉莉は思う。友人は彼氏の愚痴をよくこぼすが、茉莉にはそういった「彼氏」はいない。ただ複雑になってしまった恋愛関係があるだけだった。 彼女はふと、先日声をかけられた音楽家のことを思い出す。あの男性ももしかしてややこしい関係を持っている…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」140

赤ワインの色を見つめていると、健とうまくいっていた優しい時間のことを茉莉は思い出す。その優しかった世界が今の彼女を傷つける。教授が酔っ払いそうでなかったのなら、本当は彼女ももっと飲みたい気分だった。 健とちゃんと話した方がいいのだろうかと考える一方で、そうするのを避けたいと思う。第一、あんなにひどいことがあったのだから、茉莉が彼を…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」139

「綺麗だね」 「これ?うん。野菜の彩りが層になっていて、とっても綺麗」 そうじゃないんだ。茉莉のことなんだという言葉を教授は飲み込む。 「、、、うん。美味しいね」 彼の笑顔はどこか寂しそうだった。今夜はなんだか酔いたくなってきたと彼は飲むピッチが上がって白ワインをボトルで頼む。 「なんだか飲むの早くない?」 「まあ、たまには…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」138

そうこうしている内に注文した前菜が運ばれてくる。 「こちら、季節野菜のミルフィーユ仕立てでございます」 ウェイターは茉莉の前にお皿を置く。 「こちらは、パテ・ド・カンパーニュでございます」 「美味しそう。ね」 茉莉は嬉しそうに目を輝かせる。そんな彼女を教授は眩しそうに眺める。今夜を最後にしたくないという思いがいっそう強くなる。…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」137

それにしても今夜の茉莉はいつにも増して可愛らしく、より美しく教授には見えた。彼女を見つめていると、彼女の瞳が見つめ返してくる。その眼差しは何ら妖しげなものではなく、その純粋な光が彼の心を満たす。まるで雲の隙間、天から差し込む太陽の光にも似て、教授の魂はその世界に囚われる。 「出口はどこにもないのかもしれない、、」 ぽつりと彼は呟…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」136

少し遅れるとレストランに連絡して、教授はスマホを鞄にしまう。さっきの話がなんとなく中断したので、ちょっとほっとする。タクシーの車内でする話でもないからだった。茉莉はといえば、教授がスマホで話している最中に自分のスマホを取り出し、いつもやっているバトルゲームを始めていた。ゲームに夢中になると彼女は静かになるので余計な話をしなくてすむ。カフ…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」135

今日の教授はどこか上の空だと茉莉は感じていた。まるで何かひとつの考えに取り憑かれているようだった。茉莉はたずねてみる。 「ねえ、教授、何か気になることがあるんだったら、言って欲しいけど」 言われて彼はハッとする。 「いや、その、何となく疲れちゃって」 彼はごまかす様に笑顔を浮かべる。茉莉は彼の目をじーっとみつめる。 「何か隠し…
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ろまんくらぶ「まぼろし」134

「ねえ、教授、いつもと様子違うね」 「そう?」 彼はちょっと憂いを含んだ瞳をたたえて、頬杖をつく。彼女との別れ話をする予定でいたのに、いつもより余計に服装に気を使っている自身が疎ましい。 「なんだか、今日のスーツ、グレーの生地に薄い紫の糸が織り込まれているみたい。それがなんだかちょっと光って見えるけど」 「そうかな」 「うん。…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」133

ちょっとお洒落なカフェのドアにはベルが付いていて教授が入ってくるとチリリンと音をたてる。いつもの穏やかな音色に茉莉は顔をドアの方へ向ける。彼の様子がいつもと何だか違うような感じがする。 「待ったかな?」 「ううん。そんなに」 教授は茉莉の前に置いてあるティーカップが空になっているのを目にとめる。 「待たせたね。ごめんね」 「う…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」132

「でさ、でさ、話変わるけど、今度グランピング行かない?」 「何そのグランド、ピンク?」 「えー、茉莉ってば知らないの?」 「へんなネーミング。解説してよ」 「えーっと、何でもグラマラスとキャンピングを合わせた用語だったと思う」 「ぷっ。何それ」 「えっと、だから、グラマラスなキャンプ?」 「ぷぷ。キャンプにグラマラスなんて…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」131

茉莉がカフェで教授を待っていると着信音にしている「魔法科」のテーマが流れてくる。 「はーい、茉莉でーす」 かけてきた相手の名前を見て、彼女はちょっとチャラい感じで応ずる。 「ねー、ねー、キョージュまだなの?」 「んー、まだ。たまに研究とかっつって遅れてくるもん」 「あっそ。真面目なんだ」 「まあねー。そこがちょっとそんけー」…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」130

友之に言われて健は考え込んでしまう。「忍耐」の二文字が結構こたえる。 「何、黙り込んじゃって」 友之はまた場を軽くしようとする。沈みたくない気持ちの彼は何とか持ちこたえようとする。そんな気持ちを理解することはできるけれど、健の気分はだんだん重くなってくる。万一、茉莉が他の男性に出会ってそれがうまくいってしまったら、、。そして、彼女を…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」129

「そういう女って小細工したりするよね。だろ?」 「まあ、そうですね。俺の場合も色々されましたよ」 「で、男はそれに気づかない。まあ、そういう女は頭がよく回るから、気づかれないようにやるけれど」 「ですね」 健は氷の溶けかかったグラスをまた見つめる。 「不器用な女は隠し事もできなくて、痛みを引き受けてしまうけれどね」 「ですね…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」128

「俺と彼女は、、、」 ぽつりぽつりと健は話し始める。 「その、元々は結構上手くいってたんですよ。仲良しっていうか、幼馴染だし」 「お、出たね。幼馴染ルート」 「ルートって、アニメじゃないんですから」 「ふふん。よーくわかってるね。定番コースだからね」 「ふざけないでくださいよ。俺、話すのやめようかな」 「まあまあ、、、で?…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」127

「狼はどこからやってくるかわからない」 「だからやめて下さいよ、そういう話は」 健はちょっとむすっとする。 「まあまあ、そう怒らないでよ。これは忠告だよ、それも経験者の」 「、、、」 「俺は油断していたんだ。彼女がいつも楽しそうにしていたから、、。全然気がつかなかったよ。だって、不満ひとつ漏らさなかったから」 「友之さんの場…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」126

「マスター、同じものもう一杯」 「俺もです」 「かしこまりました」 健と友之は飲むピッチが上がってくる。時々きゃあきゃあ言う若い女子のグループが静けさを破る。2人はそのまま飲み続ける。健はつい愚痴ってしまう。 「どーにもなんないすよねー」 「お、よくわかったねえ。そうそう。抵抗しても無駄だよ」 「抵抗っつーか、相手に抵抗され…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」125

ほどほどに酔いが回ってきて健はちょっと口を滑らせる。 「ふられたって、どういう」 「あ、聞くの?そこ、は~ん?」 友之は目を細めながら、危なげな視線をくるりと健に向ける。なんだかその瞳も赤くなってきている感じがする。聞いてから健はやばいと思った。友之はくるりとまたバーテンダーの方を向く。 「ふられたんだけどさ、、、ってか他の男に…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」124

そんな想いに囚われながら、健は友之に案内され、店の奥にあるバーに入る。そこへ着く前にビップルームらしき場所があり、踊るスペースと区切られていて、ちょっと音量が押さえられていた。確かにここなら話もできそうだった。バーはいがいと広くて、奥にテーブル席もあった。フードメニューも置かれていて、ただのバーというよりビストロ風だった。 「ここは料…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」123

店に一歩入るとそこは男女の熱気で溢れていた。耳にしたことのある音楽に接すると、健はパリのバスチーユにある高名なラテンのクラブを思い出す。著名人が通っているというそのクラブに入るなり、上へと続く階段で、健は深いスリットの入った黒いロングドレスを身にまとった、かぐわしい香りの女性達とすれ違った。VIPルームへ行くには鍵の付いたエレベーターに…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」122

腕を掴まれた時、健はなんだかいやーな予感がした。これは今夜は友之に引きずり回されそうだった。 でもタクシーの中の友之はなんだか妙に静かだった。夜の灯りが窓に写っている。その風景はまるで茉莉を探し回っていた夜の景色と似ていた。今は彼女を見つけてかろうじて一緒に住んでいるけれど、健は彼女の心を見失ったままだった。健が想いにふけっている…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」121

「はあ~、食った食った」 高崎は満足そうな声を出す。 「いやあ、美味しかったですよ。連れてきていただいて、ありがとうございます」 「一度ね、一緒にきたかったんですよ。で、健さん、その、高崎さんってのやめませんか?友之でいいですよ、友之で」 「はあ」 「もう、結構、何回も仕事一緒だし、こう、同年代だし」 「まあ」 健はちょっ…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」120

「うまい」 一切れ口にして健はその美味しさに笑みがこぼれる。 「でしょでしょ」 案内した高崎も満足そうだ。新鮮な刺身にビールもすすむ。 「すんませーん。生ふたっつ」 高崎はまた店員を呼ぶ。 「かしこまりましたー」 店員も元気に応じる。 「いやー、これは酒も美味くなりますね」 健もグイグイとビールを飲み干す。 「お待た…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」119

居酒屋の中は少し薄暗く、落ち着いた印象だった。案内された席は隣の席との間に薄い縦縞の木綿のベージュの布が下がっていた。 「何にします?」 高崎に聞かれて健は答える。 「生ですかね」 「まあ、そんなところでしょう」 「ご注文承ります」 店員が頃合いを見て聞きにくる。 「生ふたっつ」 「かしこまりました」 ふたりはそれぞれ…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」118

「高崎さん、何かあて、あるんですか?」 「うーん。まあ、この付近の裏の静かな居酒屋かな?男2人だし。何回も一緒に仕事してるから、まんざら知らない仲でもないし。ま、その後は、静かなバーとかかな」 「いいですね。それでいきましょう」 「今日は金曜日だけど、まさか男2人でフレンチでもなかろう」 高崎は冗談めかして言う。 「ビストロな…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」117

書類の脇に置いてあるスマホを見るとメール着信のランプが光っている。メールを開けると取引先からだった。到着時刻に少し遅れるという。時計を見ると予定時刻の6時半を過ぎている。書類を読むことにも少し疲れたので、ファイルを閉じると、健は伸びをする。あたりを見渡すと仲の良さそうなカップルらしき二人連れが、楽しそうにおしゃべりをしている。 「いけ…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」116

でも、最初に茉莉の純真な心を突き返したのは健本人だった。それを思うと彼には自分自身にさえ言い訳をできなかった。彼女を傷つけ変えてしまったのは誰でもない、彼自身だった。かっては柔らかな笑顔を浮かべてピンク色に頬を染めて彼を見つめていた彼女は、今では彼と目も合わせずに、近寄っても来ないし、彼が近づくのも許さない。少しでも距離を縮めようとする…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」115

「なんだかちょっと寒気がする」 健はひとりごちる。誰かが彼に対して怒っているような感じがしている。夕方からの打ち合わせに備えて、資料を作っているが、気分がすぐれずなんだか進まない。もしかして怒っているのは、、、茉莉かもしれない、、。ため息を吐きたくても、あまりそれが重なるとスタッフがまた心配するのでぐっとこらえる。本当は机の上にうつ伏…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」114

顔見知りの男子が席を立ってしまってからカフェで茉莉はひとりになる。授業が終わった後の、夕方のカフェは日によっては静かだった。彼女はこんな時間も好きで、席を立ち、飲み物を頼みに行く。教授との待ち合わせまで、あと30分はあったから、少しゆっくりしようと思う。 「紅茶、ストレートでお願いします」 彼女はトレーに乗せられた透明な赤い液体が揺…
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