テーマ:恋愛小説

ろまんくらぶ「仮面の天使」173

隣の女性と話しながら健はだんだん自制が効かなくなってきているのを強く感じる。話も合うしなんとなく行けそうな印象を彼女は彼に与えた。食事が一通り終わると彼は彼女につい聞いてしまう。 「この後、予定あるの?」 「あ、ちょっと散歩でもしようかなって」 「夜なのに?」 「うん。夜に浮かぶ梅の花でも見ようかなって」 「つきあおうか」 …
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ろまんくらぶ「仮面の天使」172

酔った勢いで健は隣の女性に話しかけてみる。 「こんばんは。ひとり?」 「あ、こんばんは。ええ、今日はひとりです 気安い印象の彼女は見知らぬ男性から話しかけられても緊張した様子もない。 「いつもここくるの?」 「ええ。まあ、いきつけって感じ。ここ、安くて、美味しいし」 彼女はグラスをぐいっと飲み干す。 「ねえ、おかわりちょう…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」171

結局、健は夜風の誘いを断れず、会社の帰りにフラフラとひとりで行きつけのレストランに入る。小さな店だけど、変わった料理を出すイタリアンで、いつも常連で賑わっていた。 「何名様ですか?」 「今日はひとり」 「カウンターはいかがでしょうか」 「それでお願いします」 健は係に案内されて、カウンターの端に座る。彼よりも奥には仲が良さそう…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」170

煌めくライトの影の中、ひとり茉莉はグラスを傾けていた。 「お待たせいたしました。ミックスナッツとハニーラスクでございます」 「えっと、アレキサンダーもう一杯」 「かしこまりました」 少し心配顔になるが、黒服は何も言わずにオーダーを受ける。 茉莉はハニーラスクを手に取ると口に運び、カリッと白い歯で碎く。口の中でラスクを噛みながら…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」169

アンディの初恋は上海の高校生時代のことだった。よく行く書店で働いていた女性で顔馴染みだった。アンディは彼女に本を探してもらったり、相談にのってもらったりしていた。 ある日、ふとした瞬間にふたりの指先が触れ合い、その時、店員の彼女、リンは顔をうつむかせ、目をそらした。アンディは少し赤くなり、それが始まりだった。 書店の近所のカ…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」168

「ああ」 どうしたらいいのか、、。アンディは深いため息を漏らす。将来は上海にある会社の後継者と決まっている。当然中国に帰国しなければならない。でも、茉莉は日本での仕事が将来はあるだろう。勉強熱心な彼女を見ているときっとやりたい仕事があるのだろう。そこまで考えて彼はハッとする。 「いやいやいや」 まだ気持ちも伝えてないし、何せ始まっ…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」167

ひとしきり踊ると京子と智子はVIP席には戻らず、そのままバーカウンターに向かう。カウンターの端にあるスツールに腰掛けるとオーダーする。「ジンライムソーダ」智子が軽めのものを頼む。「テキーラのストレート」京子はちょっとした酒豪だった。 「ねえねえ、あのさ、質問があるんだけど」 「何?」 タバコを取り出しながら、京子が短く応じる。…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」166

「保護者、か」 茉莉はそう言いながら、ちょっと皮肉っぽい笑みを浮かべる。その微妙な表情を京子は見逃さなかった。やっぱり何かあると、智子に耳打ちする。 「あ、何?ふたりで内緒話し?」 茉莉は彼女達の仕草に気づく。 「え?なんでもないよ。ちょっと今日のクラブ、曲がイマイチだなって」 「そうかなあ。結構踊りやすい選曲だけど。ふたりも…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」165

京子の少し強引な提案に茉莉は躊躇する。もしお泊まり会になったら否応無く健のことを彼女達に知られてしまう。それとなく話したことはあっても紹介したことはない。それに茉莉は京子と智子に詳しい事情は話していないし、話す気もあまりない。茉莉自身、今でもズキズキと痛む時のある、深い傷跡を2人に知られたくはない。 かといって、お泊まり会を断った…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」164

回転しながら茉莉は全てを忘れてしまいたかった。健とのことも教授とのことも、、。何もかもなかったことにしたかった。くるくる回りながらそれはどこか弱々しく見えた。 「ね。見てみなよ」 「うん」 京子に促され智子も茉莉の姿を目にする。 「なんだかよくわからないけれど、危ない感じがする。それに彼女があんな感じだと心配で気分下がっちゃう」…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」163

食事を終えると彼女達3人はクラブに入る。そこは以前から茉莉が訪れていた場所で智子と京子も一緒に来たことがある。 「ね、何飲む?」 茉莉は常連だったので顔パスで他の2人と一緒にVIP席に案内される。 「ご注文は?」 「んーシャンパン。ボトルで」 「銘柄はいかがいたしますか?」 「クリコで」 「かしこまりました」 「無難でし…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」162

智子と京子が待っているカフェに向かって茉莉は急ぐ。春先の夕方の風に彼女の髪とドレスがふわふわと揺れている。ほんのりとした甘い香りが彼女が歩を進めるたびに粒子となってすれ違う人々の鼻先をくすぐる。 「待ったあ?ごめんね、ちょっと野暮用」 「え、なになに」 「あ、うん。同じクラスの子にノート見せてたの」 「ふうん」 「え、それって…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」161

食事をすませるとアンディは執事を呼ぶ。 「ちょっと散歩に行ってきたいんだけれど」 「お車を回しましょうか?」 「いい。歩きたいんだ」 彼は外の空気を吸いたかった。淡く柔らかな気持ちが少しずつ大きくなってきている気がする。でも彼の責任は若くして軽いものではなかった。今、こんなことがあれば、学問にも差し支えるのではないかと不安に指先…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」160

夕食を知らせるために、執事がアンディの書斎へやってくる。会社の次期オーナーともなれば、その部屋には書籍が詰まっていて、雰囲気は落ち着いていて、少し重々しかった。 「アンディ様、お食事の準備が整いました」 「わかった。すぐ行く」 食事の美味しさに、温度が深く関わっていることを彼は承知していた。チェン家には専門のシェフがいて、いつも丁…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」159

茉莉が行ってしまってから、アンディは少しぼーっとなっていた。春めいた陽気に当てられ、なんだかふわふわした気分になってきていた。日本の大学に来てからというもの、授業についていくのは大変だった。元々はアニメオタクの彼だから、日本語の内容はそこそこ理解はできていた。日常会話には不自由はしなかったけれど、欧米の知識を要求される授業内容には食傷気…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」158

授業を知らせるベルがなり、茉莉は教科書を閉じる。 「ふあ」 なんとなくだるくてあくびが出てくる。教室を出ようとしたところで、後ろから来た留学生に話しかけられる。 「あの、ノート、見せて、もらえますか」 彼はカタコトの日本語で話す。 「あ、うん。いいよ」 彼の名前は知らなかったが、いつも彼女の席の付近に座っていて、顔は知ってい…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」157

その過去の残像が時々、茉莉をじっと見つめているような気が彼女はしていた。何も映し出さない、ビードロのような瞳でじっとじっと。瞳の奥には大粒の涙と痛みが隠されていた。その残像を感じると彼女は憂鬱になってくる。健の存在を意識することを拒否するだけでなく、彼に傷つけられたことさえ認めたくなかった。叫び出したいのを我慢する代わりに、お酒に飲み込…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」156

「今夜はどこに行こう」 玄関の鍵を閉めながら茉莉は考えるともなく考える。二日酔いも手伝って、気分がだんだん落ち込んでくるせいか、行きたい場所も思い浮かばない。 「ま、いっか」 空を見上げても何も降ってはこない。アニメの異世界に存在するような、キラキラした天使が柔らかい羽で茉莉をくるんでくれることもない。以前のように安心して眠ってい…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」155

クローゼットの中の服を選びながら茉莉は呟く。 「でも、、」 ため息をつきながら、こんなことを毎日繰り返していて一体何になるんだろうかと、ドレスを選ぶ手を止める。まだ大学生なのに、心が汚れてしまったように感じる。 「どうしてこんな生活をしているのだろう」 半ばやけになりながら選んだドレスはショッキングピンクのミニだった。襟元が大き…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」154

「こまったなあ」 手に持ったフォークをぶらぶらさせながら健はうんざりした表情を浮かべる。春の気配が薄らぎ、夏へ向かって周囲の女性達が薄着になってくる。彼女達の健康そうな肌の輝きが彼を幻惑し始める。茉莉との関係修復がうまくいっていない現状に、他の女性達の眩しさは美しさを通り越して、突き刺さってくる。 「あ~」 どうしようもないため息…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」153

オフィスに入ると健は書類をデスクに広げる。目を通していてもいろんなことが気になって集中できない。仕方ないので、オフィスを出て自販機のある休憩室の前まで来るとコーヒーを買う。ゴトトンと缶が落ちる音がする。 「今夜はどうしよう。帰ろうか、寄り道しようか」 ふと、彼の頭に悪魔が囁きかけてくる。もやもやした気分が肉体を蝕むようだった。こんな…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」152

朝からこれではいけないと、健は両手でパンパンと頬を叩く。 「しっかりしなくちゃ。俺は経営者なんだから」 そうは言いながらも鏡に映る顔はどこか生気がなく、青白い。 鞄を手に持つと、玄関へ向かう。茉莉の部屋の方向を見るが、そのまま靴を履く。扉を開け、静かに外へ出るとガチャリと鍵をかける。 「彼女が今夜も帰ってこなかったらどうしよ…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」151

マンションに着くと茉莉は玄関の鍵を開け、抜き足差し足でこっそりと自分の部屋へ入る。どうやら健はまだ眠っているようで家の中はシンとしている。 「やれやれよっこいしょっ」 っと彼女はベッドに横になる。そのまま昼まで眠ろうとルームウェアに着替える。彼にこの後起こされないように、彼女が帰ってきた事を隠そうと、靴は自分の部屋まで持ってきていた…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」150

朝日が茉莉の顔を照らし、彼女は眩しそうに目を細める。 「いい天気、ね」 「うん」 二日酔いで頭痛がしているはずでも教授の機嫌は悪くはなかった。手を上げると彼はタクシーを止める。 「乗って乗って」 押し込むように茉莉を奥に乗せる。 「送ってくから」 「え、いいよ。電車で帰れるし」 「いいのいいの。送ってから僕んちまで回って…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」149

健がマンションに着くと思った通り茉莉は戻っていない。冷たい扉が重たく感じる。いくら物理的に一緒にいても彼女の心がとけることはなかなかなさそうだった。彼は寂しさに目を伏せる。小さくため息をつくと鞄をおろし、靴を脱ぐ。 ルームウェアに着替えるとソファーに腰掛ける。 「んー」「あー」 届いていた郵便物を興味なさそうな手つきで確認…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」148

少し眠ろうと茉莉もソファーにもたれるが、頭がはっきりしていて目をつぶっても眠りはおとずれない。彼女は目を開けると周囲を見回す。 眠っている者、起きてアプリをいじっている者、おしゃべりを続けているグループ、ひとりで静かに座っている者、、、皆、それぞれだった。茉莉は手で合図をするとウェイターを呼ぶ。 「ホットミルクください」 「か…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」147

そんな茉莉の気持ちにも頓着せず、重要な「告白」をすませた教授はうつらうつらし始めると、そのままソファー席で眠ってしまう。それを見て彼女は深いため息をつくとスマホを鞄から取り出す。本当に久しぶりに親友の法子にメールしてみる。 「ごめん。ひさしぶり。元気してたかな?連絡しなくてごめんね」 メールを送信すると茉莉はスマホを伏せる。教授…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」146

教授の突然の決意表明に茉莉は意表を突かれる。なんて答えればいいのか正直分からない。 「あの、、」 その続きが出てこない。どうしてそんなことを今言い出すのかとも言えない。 「いいの、いいの、茉莉ちゃんは気にしないで。これは僕の問題だから」 そうだろうかと彼女は思う。ふたりの関係なのだから、ふたりの問題なんじゃないかと、、。 「ね…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」145

ふたりがレストランの外へ出ると夜風が心地良い。ほてった頬に爽やかな空気が触れる。 「もっと飲みたいな」 酔っ払っている教授とは逆に、茉莉はもうあまり飲みたくなかった。 バーへ行こうとする彼を押しとどめ、彼女は彼を、たまに友達と行く深夜喫茶へ引っ張って行く。もし、教授が飲みたいのなら、そこにはちょっとしたお酒なら置いてあるからだった…
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ろまんくらぶ「仮面の天使」144

そうして夜のしじまにふたりは静かに漂っていた。飲み続けていた教授もグラスを置き、どうやらいっぱいいっぱいの様だった。でも彼はそのまま席でじっと動かない。酔いで体が重くなっているのか、椅子の中に沈み込んでいる。 茉莉はウェイターを呼び、とりあえず水と紅茶をふたり分頼む。 運ばれてきた紅茶は温かな湯気を立てて、いい香りがする。 …
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