ろまんくらぶ「仮面の天使」317
こうなると芸術家というものは歯止めが効かなくなる。この世界に存在しないものを創造することに「歯止め」など必要はない。天空から降りてくるべきものが降りてくるまで快楽と苦痛が続く。永遠とも思われる波動の連続が始まる。作品に終止符を打つことが躊躇わられるほどに限りない時間、空からの啓示を待ち続け、降りてきた時の無情の喜びは計り知れない。天才と謳われる雅矢の中では見えない音のコレスポンダンスが紡がれ始めていた。
「、、、雅矢、ねえ、聞いてる?」
「え、あ」
静香にはもうわかっていた。こういう状態の彼を止めることはできない。かといって彼女自身の中に生まれたオートマタを止めることもできない。恋愛の闘争は開始の号令を放つ。彼女はぎりぎりと爪が肌に食い込むほどにテーブルの下で両手を握り締める。心の血液が溢れてくるようだった。雅矢の熱情に輝く目線はもはやあからさまに茉莉に向けられていた。
だからふたりとも、京子が雅矢に向けている微熱視線に全く気づかなかった。アンディは京子が雅矢に気があることを知って少し安心したが、心の中に生まれた何か暗雲を思わせるような焦りが広がっていくのを感じ始めていた。さてさて、この恋愛戦争はどうなっていくのだろうか。紛争程度で済むのだろうか。それとも、、。
「ねえねえ、泳ごうよ。もうちょっとしたら」
智子は相変わらず幸福そうで何も気づかない。京子がそわそわと幸せそうな感じになってきたので余計にコントラストは薄れる。茉莉は何だか冷静だった。明らかに女性同伴の雅矢を京子にオススメすることはできない。茉莉は案外冷たい視線をチラッと雅矢に注ぐ。丁度彼は料理を見ていたために、茉莉の視線には気づかなかった。
「お腹も落ち着いたから、ちょっとクールダウンしたら泳ぐ?」
「そうだね」
茉莉の問いかけに、この席を離れたいアンディはすぐに同意する。そうだ。件の男性から茉莉たちを遠ざければ、接触しなければ、それで今夜は乗り切れる。いつもはこんなに焦ったりすることのないアンディは自身の中に生まれてきた感情に戸惑っていた。その感情は本能から発生してきていたために、止めようがない。理性など、本能に勝てることはないのだ。恋愛において、唯一、昇華だけが理性や本能を超越するとアンディは読書経験から学んではいた。にしても、動物的な衝動がこれ程に彼を悩まし始めるとは彼は思ってもみなかった。
茉莉たちが上着を残したまま、ちょっとした荷物を持って席を離れるのを雅矢は見逃さなかった。行き先も想像はできたから、彼は余裕だった。彼にとっては彼女たちとの距離を縮めるのにまたとないチャンスが訪れる。と、ただ、単純に思っていた。
「、、、雅矢、ねえ、聞いてる?」
「え、あ」
静香にはもうわかっていた。こういう状態の彼を止めることはできない。かといって彼女自身の中に生まれたオートマタを止めることもできない。恋愛の闘争は開始の号令を放つ。彼女はぎりぎりと爪が肌に食い込むほどにテーブルの下で両手を握り締める。心の血液が溢れてくるようだった。雅矢の熱情に輝く目線はもはやあからさまに茉莉に向けられていた。
だからふたりとも、京子が雅矢に向けている微熱視線に全く気づかなかった。アンディは京子が雅矢に気があることを知って少し安心したが、心の中に生まれた何か暗雲を思わせるような焦りが広がっていくのを感じ始めていた。さてさて、この恋愛戦争はどうなっていくのだろうか。紛争程度で済むのだろうか。それとも、、。
「ねえねえ、泳ごうよ。もうちょっとしたら」
智子は相変わらず幸福そうで何も気づかない。京子がそわそわと幸せそうな感じになってきたので余計にコントラストは薄れる。茉莉は何だか冷静だった。明らかに女性同伴の雅矢を京子にオススメすることはできない。茉莉は案外冷たい視線をチラッと雅矢に注ぐ。丁度彼は料理を見ていたために、茉莉の視線には気づかなかった。
「お腹も落ち着いたから、ちょっとクールダウンしたら泳ぐ?」
「そうだね」
茉莉の問いかけに、この席を離れたいアンディはすぐに同意する。そうだ。件の男性から茉莉たちを遠ざければ、接触しなければ、それで今夜は乗り切れる。いつもはこんなに焦ったりすることのないアンディは自身の中に生まれてきた感情に戸惑っていた。その感情は本能から発生してきていたために、止めようがない。理性など、本能に勝てることはないのだ。恋愛において、唯一、昇華だけが理性や本能を超越するとアンディは読書経験から学んではいた。にしても、動物的な衝動がこれ程に彼を悩まし始めるとは彼は思ってもみなかった。
茉莉たちが上着を残したまま、ちょっとした荷物を持って席を離れるのを雅矢は見逃さなかった。行き先も想像はできたから、彼は余裕だった。彼にとっては彼女たちとの距離を縮めるのにまたとないチャンスが訪れる。と、ただ、単純に思っていた。
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