ろまんくらぶ「仮面の天使」275

「これはどう?」
雪はテーブルに着くと早速お酒のメニューに目を通す。
「いいんじゃない?」
一樹も同意する。彼女が指さしたのは乾杯のための本日のグラスシャンパンだった。開栓から時間が経過しないように毎日変更しているのだろう。
「じゃあ、それで」
シャンパンはたくさん飲まなければ大丈夫だから、アンディもそれを頼む。
「オードブルは何にする?」
「これいいんじゃない。カルパッチョ」
「いいね。アンディは?」
「キッシュも良さそうだね」
「じゃあ、サラダに、カルパッチョにキッシュね」
雪は右手を上げて店員を呼ぶと注文をする。同時にシャンパンが運ばれてくる。
「かんぱーい」
「乾杯」
「乾杯」
グラスをあわせると3人はシャンパンを飲み始める。
「いい喉ごし。泡がきめ細かい」
それをすっかり気に入った彼女は、すぐにおかわりを頼む。
「で?」
ちょっと酔い始めた雪はアンディをじっと見る。
「でっ、て、、」
「まったー、隠すことないじゃない?」
「そうだね」
隣に座っていた一樹もアンディに向き合う。うっわ、きた、とアンディは身を縮こませる。
「何も、隠してないよ」
言い淀んだのがいけなかったのか、雪の視線が鋭くなる。
「ふーん。何かあるんだ。ねー、アンディって嘘つけないもんね」
「そうだね」
一樹はじっとアンディの表情を観察している。鋭い雪と冷静な一樹に分析されたらひとたまりもない。アンディは観念する。
「別に、隠しているわけじゃないよ」
「やっぱり。好きな娘とか?」
「、、気になる人がいるのは確かだよ」
「へえ。日本人?」
アンディは黙って頷く。
「うんうん。やっとアンディにも春が来たね」
雪はなんだか浮かれ始める。
「じゃ、ボトル入れようか」
きた!一樹が仕切り始めた。
「白だよね。最初は」
あーあ、きっとたくさん飲むに違いない。まずい展開になったなあ、、、とアンディは遠い目つきになる。何も話さないつもりだったのに、雪と一樹に抵抗しても無駄だったと苦笑する。
「ご注文はこちらのボトルでよろしいでしょうか」
店員は銘柄を説明しながら、一樹に白ワインを見せる。
「はい。これで」
店員はグラスを3つ並べると、それぞれに注ぎ始める。
「じゃ、改めてカンパーイ」
グラスを合わせるやいなや一樹はワインをぐいっと飲む。
「で、どんな女性?」
一樹に強い目線で聞かれ、アンディはつい口を滑らす。
「同級生だよ。同じ大学の」
「なるほど。自然な流れだね。ひと安心」
「変なトコで見つけたわけじゃないからよかったね」
雪は同意すると共にすぐにストレートな問いを投げかける。
「で、どこまで進んでるの?」
きた。彼らと話せば隠し事は難しい。アンディはそのままのことを話す。
「何もないよ。一緒の授業だったり、たまにランチを一緒に食べたり、買い物に行ったり」
「え?それってもうデートなんじゃ」
「彼女の友人たちも大抵一緒だよ」
「グループ交際かあ」
「ってか、サークル活動」
ふむふむと雪は思案顔になる。
「そこからの一歩が難しい」
言われてアンディは急にシリアスな顔になる。
「その先はなかなか進めないよ」
「どうしてそう思う?」
真面目なトーンで一樹に聞かれる。
「彼女は多分、何か恋愛で問題があったと、思う」
「恋愛に消極的?なのかな」
「正直、そんな感じ。何か話したくないことがあるみたいで、恋愛の話題を避けようとする」
「そっか。それは誰か好きな人がいる女性よりも難しい」
「え?何言ってんの?どっちも難しくない?」
雪が少しムッとする。
「それじゃあ、女性が誠実じゃないみたいじゃない」
「そういう意味じゃなくて」
嗜めるように一樹は雪の背中を撫で、説明する。
「男でも女でも、誰かを好きになることができるのは普通のことだよ。だけれど、好きになること事態を避けている人を、そういう人の心を、恋愛に向けさせるのは簡単じゃない。それも何か事情がありそうな場合はよけい、、。で、あってるかな?」
「まあ、そんなところかな」
「彼女の名前聞いてもいいかな」
「茉莉さんって言うんだけど」
「じゃあ、茉莉さんは、恋愛経験がありそうなんだ」
「そうだね。それも多分辛い恋愛だったのかもしれない」
お酒が進んでやっぱり色々話してしまい、悩んでいるアンディは口を閉じることができなくなってしまった。諦めて今夜は雪と一樹にとりあえず話を聞いてもらうことにした。







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