ろまんくらぶ「仮面の天使」248

クラブ、お花見、、、茉莉はアンディを次々とイベントに誘ってくる。そうされると彼は勘違いしそうになる。期待してしまう。でも、ふたりは「友達」。
「帰ろっか」
彼女は駅へ向かう。足取りはと言えば、急いでいるわけでもなく、のんびりしているわけでもなく、ごく普通のスピード。嫌がられているわけではないと感じると彼はほっとする。
「方向は逆かな?」
「途中まで一緒」
ふたりは山手線に乗る。席が空いていなかったため、取り立てて話すこともなく、つり革につかまり、揺られている。ガタゴトと電車の音が聞こえる。茉莉はスマホを取り出すと、メールやメッセージを確認する。
「何時頃になりそうなのかな」
平日に遅くなると、先に帰宅している健からメールが入る。茉莉はそれには答えず、反発心から削除してしまう。同時に表情が硬くなり、じっと画面を見つめている。それを察したアンディが口を開く。
「どうしたの?何か心配ごとでも」
「ううん、何でもない」
「そう?なら、いいけど」
「あ、ここで降りるんだっけ?」
「うん。じゃあ、また明日」
彼の背中を見送り、発車のベルがなる。急に彼女は心細くなる。家に戻っても、コミュニケーションの取れない相手との苦痛が待っている。コミュニケーションの取れない、、。いや、取ろうとしないのは彼女自身だということを彼女はもう意識している。健はいつでも優しい。でも、話そうとすると茉莉の心がズキンと痛む。ふたりを隔てている壁は目に見えない。その壁はそして茉莉の中に存在する。
「まあ、いいや」
ぽつんと呟くと考えるのを彼女はやめる。彼女にはまだ、彼女自身の中にある壁を壊す勇気がない。それに壊したところで、その先に待っていることを思うだけで怖くなる。10代の頃、健と付き合うことができなかった時は、こんな「壁」はできなかった。甘酸っぱい思いと同時に、痛みは柔らかな心に吸い込まれて行った。

今は、「壁」が心を衝撃から守っているから、厄介だった。

そんなことを思っていると、電車が駅に到着する。人の波に押され、彼女も車外へ出る。彼女は孤独を意識する。どこか遠くへ行ってしまいたかった。

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