ろまんくらぶ「仮面の天使」229

黙ってしまった京子はと言えば、視線をみんなからそらすように頬杖をついている。本音を言えば、今の彼とうまくいっているわけでもない。仲が悪いかと言えばそうでもないのだが、この頃なんとなく会話が減っているように感じていた。付き合いはそれなりに長いが、将来の展望も何もない。学生同士の普通の関係だった。お互いに大学院で、これからどうなるのか不透明な将来。彼はおそらく医者になるのだろうが、京子はどうするのか迷っていた。

そんな様子の京子の憂い顔に茉莉は気づいてはいるものの、かける言葉も見つからなかった。自分と同じで何か悩み事があることは感じられる。この場の微妙な空気感に、アンディは身を小さくして、静かにしている。大体女の子ばかりに囲まれているのは、ちょっと緊張する。3人の中で、悩みごとが無さそうなのは、唯一、智子だけだった。

「先に行くね」
茉莉が立ち上がる。
「あ、僕も」
アンディも立ち上がる。
「じゃあ、午後の授業の後、みんなで買い物行かない?」
智子が提案する。
「買い物って?」
「み、ず、ぎ」
「あー、そうだね。いいかも」
茉莉はうなずく。
「アンディも行くでしょ?」
「あ、うん。もし、お邪魔でなければ」
「邪魔なわけないじゃん。もう友達でしょ?」
茉莉にそう言われて、彼はちょっと複雑な心境になる。
「ありがとう。じゃ、一緒に」
「では、み〜んなで、あとでね」
茉莉とアンディが席から立って、行ってしまうと、京子は何故だか盛大なため息を吐く。
「どったの?」
口をもぐもぐと動かしながら、智子が尋ねる。
「ん〜、水着っても、まだ時期が早いんじゃ」
「あ、それも、そっか。う〜んと、どっか売ってるとこないか、ネットで探してみる」
「な〜んか、専門店とか?ハワイっぽい店とか、まさか南米っぽい、リゾート用品の店とか?」
「それって、ちょ〜っと際どい水着とかしかないかも」
「ハワイっぽい店とか、あとはサーフっぽい店?」
「だね〜。夏前だし、彼氏とプライベートビーチでもないから、バタフライはヤバイかもね」
「あと、貝殻ブラとかさ」
想像して気分が晴れたのか、京子もクスクスと笑い出す。そう。来週末のクラブ、楽しみになってきた。