ろまんくらぶ「仮面の天使」231

「ねー、混んでる」
「まあ、帰宅時間だもんね」
「新宿からまた人が乗ってくると思うけど、私たち降りるから」
「だね」
「でさ、そのクラブってカッコいいんでしょ?」
「まあね」
「食事とかは?」
智子は興味津々だ。
「軽いスナック程度しかないから、入る前にご飯かなあ」
「りょーかい」
4人はおしゃべりをしながら、混雑をやり過ごす。すぐに新宿に到着する。
「どっちらへん?」
「三丁目付近」
「オッケー。南口がいいのかな?」
「だね」
4人は出口に向かい、ホームのエレベーターで南口へ出る。
「どっちから出る?」
「こっち」
茉莉が誘導する。
「左側のビル脇のエレベーターを降りて、少し歩くけど」
「は〜い」
「了解です」
3人のおしゃべりにアンディは時々ついていけなくなる。女子の中に男ひとりだと、どうにもこうにも大変だった。
エレベーターで道路に降りて、しばらく歩くと、新宿の三丁目に出る。大きな通りを少し脇に入ったところに、バルがある。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「えっと4人。予約とかしていないけど」
「まだ今なら大丈夫ですよ。お席にご案内いたします」
店員はパリっとした白いシャツに、黒いエプロンをつけている。案内された席は奥のスペースの真ん中に位置していた。
「それではご注文が決まりましたら、お呼びください」
「じゃあ、先に飲み物頼もうかな。ね、何がいい?」
「まさか、ボトルとか?」
「今日は、あんまり。明日も授業だし」
「んじゃ、、、私はシャンパン、グラスで」
「私も」
「じゃ、私も。アンディは?」
「じゃあ、同じもので」
「かしこまりました。グラスシャンパン4つですね」
「お願いします」
店員が離れていってしまうと、智子が少しふざけた口調で話す。
「ねね、なんだかちょっちラテンっぽいイケメン」
「あ〜もう。智子ってすぐそれだから」
京子はというと苦笑いを浮かべた後、ため息を吐く。
それから4人はメニューを見て、あれこれと注文する。

ろまんくらぶ「仮面の天使」230

午後の授業が終わり、結局みんなで神田にあるサーフィン専門店へ向かう。流石に時期が早いのか、スポーツ水着が主流ではあったが、それでも少しだけリゾート水着のコーナーがあった。
女性用の水着が多くて、アンディは少し恥ずかしくなる。
「あ、ちょっとこっちに行くから」
彼は男性用の水着のコーナーへ向かう。
「え〜、待って。みんなで選ぼうよ。アンディにもイケてるの」
智子が引き止める。
「え、でも」
彼はちょっと固まる。
「ね〜。こういうのみんなで選ばなきゃ」
「だよね」
「わかった。じゃあ、待ってるから」
早速智子は売り場を見て回る。鼻歌を歌いながら気分よさそうにはしゃいでいる。比べて、京子は少し元気がない様子。茉莉はそれに気づくと、京子に耳打ちする。
「何か、悩んでるんなら、相談に乗るよ?」
「ありがと。ちょっと聞いてもらいたいことがあって」
「じゃあ、水着選び終わって、みんなで食事したら、その後、ふたりでバーでも行く」
「うん。そうしたい。実際もう限界なんだ。気分」
「わかった」
「ねえねえ、見て〜、これ、可愛くない?」
智子がふたりを呼ぶ。3人の様子をアンディは少し離れた場所で見ている。
結局、智子はフリルのついたビキニを、京子はセクシーな水着を、茉莉はパレオのついたビキニを選ぶ。
「じゃあ、次はアンディね」
4人は男性用水着の売り場へ向かう。周囲の目もあり、アンディは肩を縮こまらせて、3人の後をゆっくりついていく。
「ねえねえ、これカッコよくない?」
智子は多色の蛍光カラーがおり混ざった、派手な水着をアンディに勧める。それはちょっと気分が落ち着かないと考えると彼は躊躇する。
「これは、どうかな」
京子は逆に濃いブルーと淡いブルーがおり混ざって模様になっている、大人っぽい水着を選ぶ。茉莉はそれを見て、首を縦に振る。
「いんじゃない、それ。お洒落でクールだし、アンディっぽい」
「じゃあ、試着して見るよ」
3人の女性にこのあと見られると思うと着替えるのも緊張する。それでも勇気を出して彼はカーテンを開ける。
「どうかな?」
「素敵だね」
茉莉も京子も、それに智子もうんうんと満足気だ。
「じゃあ、これで」
彼は引っ込むと元の服に着替え、出てくると会計を済ませる。
「んじゃ、ご飯行こう」
「どこがいいかな」
「新宿のバルとかは?」
「いいね。そうしよう」
「ここからなら、中央線ですぐだし」
「うん」
4人は駅へ向かうと改札をくぐりオレンジ色の列車に乗り込む。
茉莉は京子のことを考えて、バルからそう離れていない場所にある、バーを思い浮かべる





ろまんくらぶ「仮面の天使」229

黙ってしまった京子はと言えば、視線をみんなからそらすように頬杖をついている。本音を言えば、今の彼とうまくいっているわけでもない。仲が悪いかと言えばそうでもないのだが、この頃なんとなく会話が減っているように感じていた。付き合いはそれなりに長いが、将来の展望も何もない。学生同士の普通の関係だった。お互いに大学院で、これからどうなるのか不透明な将来。彼はおそらく医者になるのだろうが、京子はどうするのか迷っていた。

そんな様子の京子の憂い顔に茉莉は気づいてはいるものの、かける言葉も見つからなかった。自分と同じで何か悩み事があることは感じられる。この場の微妙な空気感に、アンディは身を小さくして、静かにしている。大体女の子ばかりに囲まれているのは、ちょっと緊張する。3人の中で、悩みごとが無さそうなのは、唯一、智子だけだった。

「先に行くね」
茉莉が立ち上がる。
「あ、僕も」
アンディも立ち上がる。
「じゃあ、午後の授業の後、みんなで買い物行かない?」
智子が提案する。
「買い物って?」
「み、ず、ぎ」
「あー、そうだね。いいかも」
茉莉はうなずく。
「アンディも行くでしょ?」
「あ、うん。もし、お邪魔でなければ」
「邪魔なわけないじゃん。もう友達でしょ?」
茉莉にそう言われて、彼はちょっと複雑な心境になる。
「ありがとう。じゃ、一緒に」
「では、み〜んなで、あとでね」
茉莉とアンディが席から立って、行ってしまうと、京子は何故だか盛大なため息を吐く。
「どったの?」
口をもぐもぐと動かしながら、智子が尋ねる。
「ん〜、水着っても、まだ時期が早いんじゃ」
「あ、それも、そっか。う〜んと、どっか売ってるとこないか、ネットで探してみる」
「な〜んか、専門店とか?ハワイっぽい店とか、まさか南米っぽい、リゾート用品の店とか?」
「それって、ちょ〜っと際どい水着とかしかないかも」
「ハワイっぽい店とか、あとはサーフっぽい店?」
「だね〜。夏前だし、彼氏とプライベートビーチでもないから、バタフライはヤバイかもね」
「あと、貝殻ブラとかさ」
想像して気分が晴れたのか、京子もクスクスと笑い出す。そう。来週末のクラブ、楽しみになってきた。

もう6月です

今年はなんとなく

どんよりと過ぎてしまうのかな、、。

コロナのために

いろんなことを我慢していたら

なんだか何もする気が起こらなくなり、、。

よくないなあって。



でも、今晩は久しぶりに

ビーフシチューを作ろうかなって。

フランス料理のレシピ通りに真面目に

下ごしらえしました。(^^)

ついでに赤ワインをちょっと試し飲み、、。

ろまんくらぶ「仮面の天使」228

「でさ、アンディって泳げるの?」
「うん。まあ、いつもスポーツクラブ行ってるから」
「へえ、なんか、完璧じゃん。勉強もできるし」
戯けた調子で智子は続ける」
「完璧って、そんな。会社の手伝いとかもあるので、体調管理の一貫というか」
「会社って?」
「両親が会社経営してるから、その手伝いというか」
「それはそれは。将来は社長さん?」
「まだ、決まったわけではないよ。他にも候補はいるから」
「まったー、そーんなこと言っちゃって」
「ねえ、智子ってば。あんまりいじらないの。彼は真面目だから」
「ふーん。茉莉ってば、いっつも美味しいトコ持ってく」
「何、その、美味しいトコって」
「だって、今一緒に住んでる人だって、経営者でしょ?それもオーナー社長」
「ま、まあ、そうだけど」
「それと教授。いったいどうなってんの?」
「う。今はあんまり考えたくないよ」
ふたりの会話を聞いて、アンディはなんだかもしかして茉莉とのことはややこしくなるのではないかと予測する。確かに彼女はいつもキラキラしている。華やかだけど、どこか繊細で、守りたくなるタイプ、、。
「で、京子はどうなってんの?彼と」
それまで静かにしていた京子は茉莉から話を振られて、ちょっとたじろぐ。
「何かあんの〜?」
智子も京子の様子に気づく。
「何も、何もないってば」
「じゃ、順調なんだ」
問いかけに京子は沈黙する。
「あっやし〜い。きっと何かあるんだ」
智子の注意が自分から外れたので、ほっとしながら茉莉はカフェオレに口をつける。
京子が黙ってしまったので、智子もそれ以上は追求しない。お昼時に深刻になりたくはないのだった。