ろまんくらぶ「仮面の天使」172

酔った勢いで健は隣の女性に話しかけてみる。
「こんばんは。ひとり?」
「あ、こんばんは。ええ、今日はひとりです
気安い印象の彼女は見知らぬ男性から話しかけられても緊張した様子もない。
「いつもここくるの?」
「ええ。まあ、いきつけって感じ。ここ、安くて、美味しいし」
彼女はグラスをぐいっと飲み干す。
「ねえ、おかわりちょうだい」
店員に気軽に注文する。
「かしこまりました。同じもので」
ほんのりと頬が赤くなってきた彼女はより一層色気が増してくる。厚化粧ではないが、口紅は赤い。
「ここ、お酒も安いし、助かる。私、結構呑んべえだから」
ウィンクしながら彼女はおしゃべりを続ける。
「んーっと、ここってカップル多いよね」
「まあね」
「君は?」
かなりの直球を健は繰り出す。
「うーん、、、こないだ別れた」
「あ、ごめん。まずいこと聞いちゃったね」
「ううん。仕方ない。気が合わなかったんでしょ」
言いながら彼女はまたグラスをぐいっと空にする。瞳はどこか遠くを見つめているようだった。



アンディはベッドに横になると、決心して悩み事がなくなったかのようにすぐに眠りに落ちる。ほんの少しだけ開いていた窓から柔らかな風が入ってくる。眼鏡を外した彼の容姿は涼しげでそれなりに整っていた。まだ残っている少年の面影が、月明かりに照らされていた。



クラブで深酒をした茉莉は眠り込んでしまった。ソファにその身を沈め、智子と京子の話し声と音楽がだんだんと遠くなっていった。

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