ろまんくらぶ「仮面の天使」166

「保護者、か」
茉莉はそう言いながら、ちょっと皮肉っぽい笑みを浮かべる。その微妙な表情を京子は見逃さなかった。やっぱり何かあると、智子に耳打ちする。
「あ、何?ふたりで内緒話し?」
茉莉は彼女達の仕草に気づく。
「え?なんでもないよ。ちょっと今日のクラブ、曲がイマイチだなって」
「そうかなあ。結構踊りやすい選曲だけど。ふたりも踊ってくれば?」
「ラジャー」
「ちょい、行ってきまーす」
京子と智子はふたりして立ち上がる。
「茉莉は?」
「んー、結構踊ったから飲もうかなって」
「オッケー」
ふたりが行ってしまうと、茉莉は健をどう彼女達に紹介したものかと思い悩む。「保護者みたいなもの」とはよく言ったものだと苦笑する。まあ、実際、茉莉を探しに来た時はそんな感じだった。
「何かお飲みになりますか?」
顔馴染みの黒服が側に来る。
「んーと、アレキサンダー」
「またお強いのを」
「いいの。なんか飲みたくなっちゃった」
「かしこまりました」
彼が行ってしまうと茉莉は頬杖をつく。タコパは楽しみだけど、面倒なことにならなければいいなと心配になる。なんだか京子の目つきがさっきっから気になっていた。心理学も学んでいるせいで、茉莉の観察眼もかなり鋭い。
「あー、気がおもーい」
「お待たせいたしました。アレキサンダーです。えっとどうなさいましたか?」
「えー、何でもー。ありがと。あと、ミックスナッツとハニーラスクもお願い」
「かしこまりました」
馴染みの彼は余計な首は突っ込まず、涼しい顔で去っていく。彼から見て、茉莉は「VIPのお客様」だけれど、なんだか可愛い妹の様だった。今夜の彼女は少しやけ気味かなと感じる。

京子と智子は踊りながら、タコパの打ち合わせをする。時々耳打ちしながら、相談している。音楽とライトに隠れてそんな様子は茉莉からはよくわからない。アレキサンダーに口をつけると茉莉は酔いに任せて思考が停止すればいいのにと思う。

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