ろまんくらぶ「仮面の天使」154

「こまったなあ」
手に持ったフォークをぶらぶらさせながら健はうんざりした表情を浮かべる。春の気配が薄らぎ、夏へ向かって周囲の女性達が薄着になってくる。彼女達の健康そうな肌の輝きが彼を幻惑し始める。茉莉との関係修復がうまくいっていない現状に、他の女性達の眩しさは美しさを通り越して、突き刺さってくる。
「あ~」
どうしようもないため息が漏れてくる。彼女達から目を逸らし、空を見上げると飛行機雲が青空に二筋ついている。どこか遠くへ行きたい気分になる。ビーチを思い浮かべると青いサンゴ礁の幻影がまぶたを閉じると見えるような気がする。でも次の瞬間、ビキニ姿の女性達が浜辺ではしゃぐ姿を感じて健ははっとして目を開ける。
「やばいやばいやばい」
ブツブツ言いながら食事を終えると、コーヒーが運ばれてきて、我にかえる。彼は今の彼自身の肉体の状況がまずいと強く意識する。
「やっぱり帰り、 飲みに行こう」
そう決めると、少しだけ、すっきりする。何かはけ口が必要だと感じて、飲んだ先の出来事を妄想する。
「あそこがいいかな、、」
以前によく行っていた新宿のクラブを思い浮かべる。
「そうだ。簡単に食事した後に、ちょっと遊べばいいんだから」
会計をすませると彼は少し元気を取り戻す。なに、クラブで遊ぶくらい構わないだろう。たいしたことではないのだから。


午後になると茉莉はベッドからごそごそと出てくる。マンションの中は静かで、健がもう出かけているのを確認する。
キッチンに行くと、ビスケットをお皿に乗せる。カフェオレを作ろうとミルクをレンジで温め、お湯を沸かす。小分けパックのコーヒーをミルクの入ったカップに乗せ、湧いたお湯を注ぐ。
「まだ、ねむいなあ」
だるそうに彼女は伸びをすると、テーブルに肘をつきながら、ビスケットを口にする。ルームウェアでのんびりしていると午後の授業に出かける時間がせまってくる。仕方なさそうに自分の部屋へ行くと、机の上のスマホランプが光っている。メールが届いていて、内容は今夜のことだった。
「遊びに行かない?」
いつもの誘いだった。じゃあ何を着て行こうかと、彼女はクローゼットを開ける。今夜はツインテールに露出でいこうかと思うと、いたずらっ子のような笑いを彼女は浮かべる。

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