ろまんくらぶ「仮面の天使」156

「今夜はどこに行こう」
玄関の鍵を閉めながら茉莉は考えるともなく考える。二日酔いも手伝って、気分がだんだん落ち込んでくるせいか、行きたい場所も思い浮かばない。
「ま、いっか」
空を見上げても何も降ってはこない。アニメの異世界に存在するような、キラキラした天使が柔らかい羽で茉莉をくるんでくれることもない。以前のように安心して眠っていられるわけではない。とぼとぼと駅へ向かって歩く彼女の背中は寂しそうだった。道端にある石ころを子供のようにちょっと蹴ってみる。
「ふふ」
少し笑顔になりながらも、彼女は彼女が失ったものが何なのかよくわからない。本当に失ったのか、それともどこかにあるのか、、。失ったものが何なのかわかればどうにかしようもあるのか、、。
「わかんな~い」
苦笑いを浮かべながら、改札を通り過ぎる。電車に並ぶ人の列に紛れると、なんだか存在が透明になっていく気がする。軽い存在。軽い生。そんなわけはない。そんなわけはないと茉莉は両目をぎゅっと閉じる。電車が来る音が聞こえる。扉が開く音がする、、。人々が流れて行く。

満員電車に揺られて彼女は見るでもなく窓の外を眺めている。通り過ぎる風景は彼女の瞳に映らない。瞳の奥には縮こまって背中を丸めていた過去の彼女の残像がある。

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