ろまんくらぶ「仮面の天使」149

健がマンションに着くと思った通り茉莉は戻っていない。冷たい扉が重たく感じる。いくら物理的に一緒にいても彼女の心がとけることはなかなかなさそうだった。彼は寂しさに目を伏せる。小さくため息をつくと鞄をおろし、靴を脱ぐ。

ルームウェアに着替えるとソファーに腰掛ける。

「んー」「あー」
届いていた郵便物を興味なさそうな手つきで確認するとテーブルの上にほっぽり出す。ソファーを離れるとそのままベッドに横になる。もう真夜中はとっくに過ぎている。茉莉はまた帰って来ないだろう。諦めると彼は布団にもぐり込み、すぐに寝息を立て始める。

建物の中は静かだった。静けさの中に健は沈み込んでいく。


朝日が喫茶店の窓から入ってくる。
「きょーじゅ?ねえねえ、きょーじゅ?」
茉莉に肩をぽんぽんと叩かれて教授は目を覚ます。
「もう、朝だよ。ねえ、帰ろうよ」
「あ、僕、寝てたの?」
「うん。ぐっすり」
「あの、、、ごめん。何か変なことしなかった?」
どうやら彼は昨夜の事をよく覚えていないらしい。
「大丈夫。特別何も。疲れてたみたい」
「うーん」
顎に手を添えて、彼は何かを思い出そうと考え込んでいる。何か重大な事があったのかもしれない、、。
「僕、何か言わなかった?」
「さあ」
今は彼の決意に応える気分ではなかったので、茉莉はそらっとぼける。それにしても話があると言っていたのは教授自身なのに、覚えていないなんてと彼女は呆れる。

「帰りましょ」
伝票を手に取ると茉莉はさっさと会計を済ます。教授はもたもたと衣服を直す。どうやら二日酔いで頭が回っていない様子だった。

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