楠えりかのフレンチ・ヴォイス・ブログ

アクセスカウンタ

zoom RSS ろまんくらぶ「仮面の天使」95

<<   作成日時 : 2017/05/19 10:41   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

玉木雅也。気だるい雰囲気を漂わせ、彼は今日も自宅スタジオのグランドピアノに向かっていた。時折気が向くとショパンの「雨だれ」を弾いたりする。そんな時の彼は身内にうっすらと揺らめく肉体の炎を感じていた。細く長い指が滑らかに鍵盤をすべり、赤い爪の指先にぶつかる。ピアノの横には胸の大きく開いた身体にぴったりとした黒いミニドレスの女がしなだれかかるように立っている。

彼女の指をついっとかわし、雅也の指先は相変わらず鍵盤を撫で続け、音の中に入り込むと虚ろな目に光を宿す。そんな様子の彼にはなれっこなのか、女はピアノの側を離れ、スタジオにあるコーヒーテーブルに腰掛ける。長い足を組み替えると静かに細いシガーの煙をくゆらす。雨だれが一通り降り続き、雅也はふとあの夜のピンク色の天使を思い出す。そう言えば自分のチケットを渡しただけで、名前も聞いていなかったっけ。

ピアノの音がやむ。女は又、雅也の悪い癖が始まりそうだと眉間にしわを寄せる。雅也はいつも鍵盤を撫で、その滑らかな動きで女の肌を撫で、鳴かせる。シルキーなタッチで女を喜ばせ、そしてその後、地獄に突き落とす。獲物を見つけると雅也の目には独特の光が瞬く。
「コーヒー飲む?」
頃合いを見計らって女が声をかける。
「ああ」
雅也はピアノから離れ、女の座っているコーヒーテーブルに向かう。あたりにはエスプレッソの強い香りが漂う。コーヒーシュガーをひとつ、彼は黒い液体に沈める。そしてあの天使を黒い闇の中で引き裂くのを想像する。女はため息をつく。雅也の瞳はものうげに何かを見つめようとしている。




テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文
ろまんくらぶ「仮面の天使」95 楠えりかのフレンチ・ヴォイス・ブログ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる